建具考

6.藤岡家住宅ファサードの柱間装置 その3

藤岡家住宅の奈良格子
藤岡家住宅の奈良格子

次にその横には丸太格子が取り付けられています。格子は大敷居や鴨居など建築に組み込まれたものでありましたが、時代が下がると京格子のように建具に発展し取り外し可能なものになっていきます。ミセノマのからくり装置に対して格子は光と陰の装置とも言えましょう。防犯の役割の他、眺望や採光、通風といった機能も持ち、外の様子が伺えることで建物内部と外部との関係を閉鎖と開放の両面を併せ持つ構成に保ちます。この丸太格子は竪子の間隔が広く粗いため、昼間は本来外から暗くて見えづらい内部を伺い知ることができるため格子の内側に竹簾を打つことでそれを防いでいます。奈良町の町家の格子は建具化する以前の台敷居や鴨居に組み込む古い形式の格子が多く残っています。この丸太格子は奈良格子と呼ばれていますが、町家型地割をもつ法蓮町の農家に多く見られることから法蓮格子とも呼ばれ、また鹿の角を傷つけないために丸太を使用しているので鹿格子とも言われています。両側柱と軒を直接支える構造で、90φほどの丸太材を半割にして75ミリ程に幅をそろえ、基礎石から軒桁まで等間隔で建てて数段の貫状の板材で繋いだだけの簡単な造りの素朴な格子です。小径木ですみ資材の調達のしやすさや工法の簡便さが好まれ業種を問わず町家で幅広く使われていますが、奈良町独特のもので他の地域では見ることはできません。その格子が茶室の縁に取り付けられていて町の気配を感じながら客人をもてなしていたのでしょう。

そのほかに奈良町の町家では太い角材を使った太格子、建具化した京格子、木辻町の置屋に見られる木辻格子などがあります。奈良の格子には、古い型の太格子が多く残っているのが特徴です。