建具考

2.伝統的町家と建具

信貴山縁起絵巻
信貴山縁起絵巻(クリックで拡大)

洛中洛外図「舟木本」
洛中洛外図「舟木本」
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伝統的町家の古い形と言えば、まず思い浮かべるのが絵巻や絵図などに描かれている町家です。古代の町家が描かれている年中行事絵巻や信貴山縁起絵巻、中世の町家が描かれている洛中洛外図(歴博甲本)、近世であれば洛中洛外図(舟木本)など時代時代で町家が変化し発展してきているのがよく分かります。

信貴山縁起絵巻には12世紀頃の庶民の家が描かれています。屋根は板葺きで壁は土壁。戸口は大きく開かれ、土間では家人が糸を紡ぎながら敷居に腰掛けている人と何やら会話をしています。その戸口は片引きではなく、おそらく昼間は開け放してのれんを掛け夜は閉めるという跳ね上げの板戸、いわゆる大戸と呼ばれているものであろうと想像できます。そして、横の居室の窓からは母親と子供達が外の吠える犬を覗き、父親であろう主人が犬をなだめるている様子が描かれています。その窓の建具は廻りの桟に縦横十字に組子を通しその裏に薄い割板を貼った木連格子の板戸で非常に簡単な構造になっています。上部の吊り元を突き上げ棒で支えてある、いわゆる蔀戸を吊った高窓になっています。昼間は外へはね上げ棒で支えている突き上げ窓です。夜はその棒をはずし、雨戸、板戸として防犯の役目も果たしています。また、内部には横桟の舞良戸がはめられており、総じて簡単で経済的な造りに感じられます。通りに面した壁は、開口部分より壁が多くわりあいに閉鎖的な町家に感じられます。